公開憲法フォーラム声明文
5月3日に行われた公開憲法フォーラム声明文は以下の通リです。
この憲法で国家の危機を乗り越えられるのか
―感染症・大地震・尖閣―
新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行は一年を超えて続いており、わが国でも感染者数の急増により、今年に入っても緊急事態宣言やまん延防止等措置などの緊急措置の発出を余儀なくされている。現在は感染力がより強いとされる変異株が広がりつつあり、収束の気配はみられない。
他方、軍事力を増大させている中国は、傍若無人に東アジアの国際秩序の変更を試みており、緊迫の度を増している。中国は「海警法」によって中国独自の「管轄海域」を一方的に設定し、中国公船「海警」を尖閣諸島周辺海域へ常時侵入させ、わが国漁船に対する追尾を繰り返すなど、わが国領海における主権を侵害している。また台湾周辺では、戦闘機を台湾の防衛識別圏へ侵入させ、台湾侵攻を想定した戦闘訓練を行っている。そのため米インド太平洋軍司令官は三月九日、米上院軍事委員会の公聴会で「六年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」と証言したほどである。台湾有事は尖閣諸島の危機に直結する重大事であり、四月十六日の日米首脳による共同声明でも「台湾海峡の平和と安定の重要性」を指摘している。
他方、十年前に東北地方を襲った巨大地震は、今後、首都圏ならびに東南海から西日本にかけて三十年以内に七〇%以上の確率で発生すると予測されている。それ故、どの自治体であっても被災地になり得る。
まさにわが国は内外ともに、未曽有の国難のさなかにあるといってよい。
ところが現行憲法は緊急事態や自衛隊に関する規定を欠いたまま、制定以来七十年以上を経た。私権を絶対視する戦後の風潮の中で、緊急事態への対処にも様々な制約がある。先ごろは、新型ウイルス感染症の緊急事態宣言に基づく飲食業への時短要請に対して違憲訴訟も提起された。
緊急事態の発生や安全保障上の危機を想定していないという構造的欠陥を有する現行憲法のもと、わが国が直面している国内外の未曾有の危機を乗り越え、国家の主権や国民のいのちと暮らしを守っていくことは果たして可能であろうか。
ここに、第二十三回公開憲法フォーラムの開催にあたり、私達は、感染症の収束や尖閣諸島の危機克服に向けて国民の団結を呼びかける。それとともに国会ならびに各党各会派に対しては、国民のいのちと暮らしを守る国家の責任を果たすべく、国民投票法改正案を速やかに成立させるとともに、憲法改正原案づくりに着手し憲法改正の国会発議を実現するよう、強く要望する。
令和三年五月三日 「21世紀の日本と憲法」有識者懇談会(通称 民間憲法臨調)
美しい日本の憲法をつくる国民の会